ソードマスター

 


「潮の匂い〜。懐かしいなあ。」
 犬の顔をした少年が丘の先に見えてきた海にはしゃいで声を上げた。
やや汚れた、簡素で頑丈な服は彼が旅をしているのだと思わせる。
「ほら、早く早く!」
 少年は丘の上で立ち止まると後に続く人影を振り返り大きな声で呼びかけた。
雑草に囲まれた雑な道を歩いて近づいてくる人影は、少年よりもずっと大きかった。
鍛え上げられた体躯は目を見張るものがあり、
少年同様に旅人を思わせる服ははじけ飛んでしまうのではないかと思うほどに盛り上がっていた。
海から吹き付ける潮風をなびかせる髭で感じながら大きな体をした虎は困ったような、
それでいて今の状況を楽しんでいるような複雑な表情を浮かべていた。
 腰にはその体に似合う大きな剣を二本、下げている。
それが、彼らが生きる術であり、すべてであった。

 

 二人は「剣聖」とまで称される凄腕の剣士とその従者。
二本の剣を持ち、二人であらゆる敵をなぎ倒す。
決して誰にも負ける事のない「剣聖」は、いまや生きた伝説だった。
生きた伝説を雇い入れようとする者達は数多くいる。
それでも一所に留まることなく、二人は流れつづけていた。
名声も大金も彼らには必要ない。
ただ、自分達の好きなことを、刺激的なことを求めてさまようのが彼らの生き方なのだ。

 

「海に来るのなんか久しぶりだなあ。アトラは来たことある?」
 はしゃぎながら話し掛けてくる少年に、苦笑しながら虎は首を横に振った。
「そっかー。僕は小さい頃に何回か行った事あるよー。
アレだけ大きいと見てるだけで楽しいよねー。」
 少年は1人で嬉々として話し、虎は無言でそれを聞く。
二人の会話はそうやって成立していた。
「やっぱり海の傍だしお魚がおいしいのかなあ・・・。
あ、その前に頼まれた手紙ちゃんと渡しに行かないとね。」
 虎は頷くと胸元から封をされた手紙を出して少年に渡した。
以前立ち寄った村で、もしこの村に立ち寄るのならある人に渡しておいてほしいと頼まれたものだ。
特に行くあてがあった訳でもない二人は頼みごとを快く引き受け、この村にやってきた。
「じゃあとりあえず宿とって、アトラはそこで休んでて。
いつもどおり僕が行って来るから。」
 虎の逞しい姿は良く目立つ。
ただ逞しいというだけならそう珍しくはないが、服を着ていても筋肉が見えるかのようなその隆起はやはり目を引く。
それに加えて腰に挿した二本の剣。
 生きた伝説として名を馳せている彼らは当然のように挑戦者も多い。
そういった輩を避けるために、目立つ虎が宿で待ち少年が仕事をするというスタイルが自然と多くなる。
今回も彼らはそうするつもりだった。

 

 

「じゃあいってきまーす。」
 手紙を持った少年はそういうと元気よく宿を出て行った。
虎は子供をお使いに出したようなやや不安な気持ちに駆られながらも、
いつものことだと自分に言い聞かせ、宿の主人に入れてもらったコーヒーを口にした。
小さな村とはいえ、目的の人を探して手紙を渡し帰ってくるころには日も暮れているだろう。
久々に一人でゆったりとすごす時間を虎はどうしようかと思案にくれ天井を見上げた。
 客が来ること自体が珍しいのだろう、お世辞にも綺麗とはいえないその宿は半分は民家と一体になっているようだった。
そんな、よく言えば家庭的な雰囲気に囲まれて虎は一眠りしようかと考えていた。
「あの・・・。」
 遠慮がちな声が背中のほうから聞こえた。
後ろを振り向けば宿の主人が申し訳なさそうな顔で立っていた。
虎は机の上にコーヒーを置くと、彼のほうを向くように座りなおした。
「アトラ様とエル様、というのはあの・・・?」
 自分たちのことはこんな小さな村でも噂として流れているらしい。
ここでは誰かに見つかることもないだろうとたかをくくっていた虎は
主人に気づかれないように自嘲気味に笑うと、軽くうなづいた。
その返事に安堵の表情を浮かべて主人は軽く息を吐いた。
「実は折り入って頼みがあるのです。」
 主人は申し訳ない顔をしてそういった。
どうやらその顔は生まれつきであるらしい。
「最近この村の近くに盗賊が現れて・・・」
 話はよくあるものだった。
近くにやってきた盗賊団がこの村にやってきては金品を強奪しているらしい。
この村にそんなに金品があるのかと虎は疑問に思ったが、主人がそう訴えている以上はそうなのだろう。
さすがに盗賊団をでっち上げるメリットがあるとも思えない。
先ほどよりも3割り増しで申し訳なさそうな顔をする主人を見て虎は頼みを引き受けることにした。
「わかりました。その盗賊団とやらを追い出せばいいんですね?」
 犬の少年が聞けば「一気に壊滅させとこうよー」などと言いそうなところであるが、
基本的に穏便な性格をしている虎は、盗賊団といえども殺すという方法以外をとりたかった。
そのためにはできるだけ穏便に、盗賊団を追い出す必要がある。
「あ、ありがとうございます!」
 喜びながらも申し訳なさそうな顔をしている主人は腰を90度まで曲げて深々とお辞儀をした。

 

 


「大変だ、奴等がきたぞ!」
 突然飛び込んできた男がそう叫んだ。
主人がその声に青ざめた顔で立ち上がる。
「そ、そんな。まだこんなに明るいのに・・・。」
 主人がうろたえたような、申し訳ないような顔でつぶやいた。
話の流れから先ほどの盗賊団が来たことはすぐに推測できた。
虎は腰の剣を確認すると、立ち上がり宿の外へと飛び出した。

 辺りには薄汚れた服を着、剣や槍のような武器を振り回す獣人たちの姿があった。
「やめろ!」
 虎が叫んでみたが、数人の盗賊がこちらに向かってきたのみであった。
虎は小さく舌打ちをすると、腰の剣を抜き放ちすれ違いざまに盗賊を切りつけた。
ただの一振りで、襲ってきた獣人の二人が倒れ付す。
 虎は改めて煙が立ち昇っている村を見渡すと、近くにいる盗賊たちに向かって片刃の剣を構えた。
平和主義者を貫く彼は片刃の剣を用い、峰打ちで敵を斬る。
斬られた敵は無傷であるにもかかわらず思い込みだけで気を失う。
そう思わせるだけの鋭さが、彼の剣にはあった。
無謀な盗賊たちが虎に向かって斬りかかる。
虎はそれを軽くかわすと、再び盗賊たちを昏倒させた。
「さすがアトラさま!」
 後ろから村人たちの声が聞こえる。宿の主人に名を聞いたのだろう。
アトラが剣を振るうたびに背後から聞こえる歓声が大きくなっていった。
しかし後から後から襲ってくる盗賊たちに、さすがの虎も押されぎみになる。
「そこまでだ!」
 虎が動きを止めたのはその声が聞こえたときだった。

 


 肩を大きく動かしながら、構えた剣を下ろし虎は声のしたほうを見た。
他の盗賊たちよりもややいい服を着、馬に乗った一回り大きな狼。
目には眼帯をつけ、片手には大きく反り返った円月刀、もう片方の手には村人と思しき少女が捕まっていた。
「うっ・・・。」
 少女の存在の意味するところを知り、虎は動きを止める。
人質をとられては虎も動きようがなかった。
少女を片手で捕まえたまま、眼帯をした狼は馬を歩かせこちらに近づいてきた。
「お前、あの『剣聖』なんだってなあ?まったく、よくやってくれたもんだぜ。」
 そういいながら狼は辺りを見渡した。
10人近い盗賊が辺りでのびており、吹き飛ばされた盗賊がぶつかったと思われる家は壁に穴があいていた。
「俺たちでもここまでしないぜ。なあ、嬢ちゃん?」
 そういって狼は長い舌で少女の頬をべろりと舐めた。
少女は小さな声で悲鳴を上げたが、恐怖からかそれ以上動こうともしない。
虎はそれを見ながら悔しそうに歯噛みするだけであった。
「これだけしてくれたんだ、それなりに責任はとってくれるんだろうな?」
 そういってにやり、と狼はわらった。
狼の後ろには数十人はいると思われる盗賊たちが控えていた。

 

 

「剣を捨てろ。」
 狼の言葉に虎は手にしていた剣を足元に放り投げた。
「もっと遠くにだ。それから腰のもう一本もな。」
 そういわれ虎は足元の剣を蹴り飛ばし、腰に下げていた剣を鞘ごと手にするとそれもあさっての方向へ
力の限り投げ捨てた。
虎が蹴飛ばした剣を部下に拾わせ、狼は馬に乗ったまま虎の前までやってきた。
円月刀が虎の胸元に突きつけられる。
「さすがに『剣聖』と言われるだけはあるな。いい体だ。」
 そういうと狼は軽く剣を振るい虎の胸元を浅く切り裂いた。
数本の獣毛が空を舞い、切り開かれた胸元からはたくましい胸が顔をのぞかせる。
「たまんねえな・・・全部脱げよ。」
「何・・・?」
 さすがに予想外の言葉を言われ虎は戸惑いを隠せない。
目の前の眼帯をした狼はどう見ても男だ。
もちろん虎自身もとても女性に見えるとは思えない。
だが、狼は刀を少女に突きつけ早くしろ言わんばかりの顔でこちらを見た。
「くっ・・・。」
 虎は観念したように服を脱いでいく。
切り裂かれた上衣と、ズボンを脱ぐと虎はあっという間に下着一枚になった。
かろうじて股間を隠している小さな下着は内側から押し上げられくっきりと形を浮き出している。
狼はその股間を見るとごくりとつばを飲み込んだ。
「それもだ。早くしろ。」
 そういって血走った目で狼は命令をした。
虎はゆっくりとそれを下ろすと、狼の目の前でそれを投げ捨てた。
周りの村人たちの視線が自分の股間に集中しているのがわかる。
もちろん、狼や人質になっている少女、盗賊たちの視線もすべてがそこに注がれていた。
平常時でも平均サイズから逸脱したそれは勃起しているのではないかと思うほど太く、
血管も雁首も遠目からはっきりとわかるほどであった。
「そそるもんもってるじゃねえか・・・。」
 そういって狼は刀の先で虎の陰茎を軽くつつく。
切れるのではないかという恐怖に襲われながらも、虎は微動だにすることなくその場に立ち尽くしていた。
刀の先がこすれる微妙な刺激が虎の陰茎を少しずつ大きくしていく。
狼も、虎も、村人や盗賊たちも、虎の陰茎が少しずつ上を向いていくのをただ黙って見つめていた。
やがて刀を跳ね除けるように立ち上がったそれはみなの予想通り、いやそれ以上に立派な姿を衆目にさらしていた。
「『剣聖』ってのはひょっとしてこっちの『剣』の使い方でついた名前じゃねえのか?
真っ黒に染めやがって、相当遊んだんだろうが。」
 狼は虎をなじるようにいいながら突然刀の刃を押し付けてきた。
「うっ!」
 その恐怖に虎は小さなうめき声を上げたが、股間にある『剣』は先端から小さな雫をたらしていた。
それを見て狼はにやり、と笑うと刀を鞘に収め空いた手で虎の股間に触れる。
「はっ・・・!」
 ゆるりと触られた感触に虎は思わず声を上げる。
だが、自分の周りにいる村人や盗賊の存在を思い出し、必死でその声を押さえ込んだ。
「お前ら見ろよ、こいつ感じてるぜ。」
 そういって狼は、虎の先走りでぬれた手を見せ付けるようにして空へとかざした。
盗賊たちから歓声があがる。
村人たちも、目をそらすことなくじっとそれを見つめるしかなかった。
「淫乱な虎だな。え?」
 狼が突然虎の陰茎を強く握ってきた。
「ぐぅっ!?」
 突然襲ってきた痛みに虎はうめき声を上げながらとっさに腰を引く。
だがその行為は狼の手と自分の陰茎がこすり付けられる結果となった。
とくに敏感な亀頭を狼に雑につかまれ虎は思いのほかに快感を感じていた。
先端からは快感の証としてさらに先走りの液があふれてくる。
それを見て虎が感じていることに気づいた狼は、さらに虎の亀頭を重点的に撫で回した。
「ふあっ、あああぁっ!」
 ここしばらく、他人との交わりも自分で慰める行為も行っていなかった虎は自分の弱点を攻められ大きな声を上げた。
自分が声を上げたことに気づき虎は思わず赤面する。
「まったく、淫乱な野郎だな。そんなにしたきゃ、自分でしたらどうだ?」
 そういって狼は虎の陰茎から手を離すと、一歩後に下がった。
狼は片手に少女を捕まえたまま、反対の手についている虎の先走りを舐め取った。
狼は無言で虎を見つめている。
プレッシャーを与えられていることはわかった。
やらなければ少女が危ない、と虎は自分に言い聞かせ上を向いた大きな陰茎を手にした。
村人たちからざわりとしたざわめきが聞こえる。
羞恥心で今にも消えてしまいたい虎は、それでも少女を守るために自分の陰茎をこすり始めた。


 

 かるくこすれるような音は、やがてくちゃくちゃと言う湿っぽい音に変わってきた。
虎の息は荒くなり、陰茎を握る手の動きは少しずつ早くなる。
狼も盗賊たちも、食い入るようにそれを見つめていた。
自分の体にまとわりつくたくさんの視線を感じながら虎は明らかに興奮していた。
「み、見るな、みないでくれぇっ!」
 そう叫びながらも虎の手の動きはどんどん早くなる。
黒い色をした、まさに立派とい言葉がふさわしい陰茎は自らの体液で濡れ、光っていた。
村人たちの視線と、盗賊たちの視線を股間に感じながら虎の手の速度は最高潮に達していた。
「感じてるんだろうが、この変態が!さっさといっちまえ!」
 そういって亀頭を荒々しく握る狼の手で、虎は絶頂を迎えた。
「あああっ!イくっ!!」
 その言葉とともに虎は大量の精液を吐き出した。
尋常でないその量は、虎と狼を頭から白く染め上げていく。
やがて二人の全身が虎の精液でどろどろになったころにようやく虎の吐精は終わった。
 全力を出し尽くしたかのように虎はその場に仰向けに倒れこむ。
大の字で天を仰いで横たわる虎の股間は、巨大なたけのこのようにいまだに天を突いていた。
まるで違う生き物のように、肉色をした棒はみなの視線を感じているようにびくびくと振るえていた。
「まだ終わらねえぞ。」
 そういって狼は人質の少女を投げ捨てると、その場にかがみこみ虎の肉棒を口に含んだ。
「あああ・・・。」
 柔らかな肉に包まれていく感覚に虎は素直に快感の声を上げた。
狼の柔らかな舌が虎に絡み付いてくる。
それだけで虎の全身の筋肉はびくびくと痙攣するように動いていた。
ちゅぱちゅぱとなる狼の卑猥な舌使いと、襲い来る感覚に虎の思考は完全に麻痺していた。
快感を求めるように虎はゆっくりと腰を振る。
するとそれに答えるように狼の舌の動きは激しさを増し、さらに空いた手が虎の全身をまさぐり始めた。
「あっ、そこは・・・か、感じるっ!」
 周りで自分を見ている盗賊だけでなく、村人の中にも興奮した顔を見つけた虎はさらに扇情的に体をくねらせた。
「もっと・・・、もっとだ!」
 だがその言葉に狼は口を離してしまう。
突然快感を奪われ虎は怪訝そうな顔で狼を見た。
「そんな顔するなよ・・・。おねだりできた御褒美をやるぜ。」
 そういって狼は虎の太い足を抱え上げ、あらわになった肛門を舐め始めた。
「そ、そこは・・・」
 だが虎の苦情は聞き入られることはなかった。
すばやく進入してきた狼の指に虎は声を上げることさえできない。
汗にぬれた全身と、狼の唾液にまみれた大きな陰茎を震わせて虎は無言で堪えた。
二本、三本と増える指も難なく飲み込まれていく。
「いいぜ・・・お前素質あるんじゃねえか?」
 そういって狼は虎の肛門から指を一気に引き抜いた。
「ひぃっ!」
 さすがにその刺激で虎は小さな悲鳴を上げた。
「すぐにもっと気持ちよくなるぜ・・・。」
 狼は手際よく自分の股間を露出すると、すでにいきり立ったそれを虎の肛門に一気に挿入した。
「があああぁぁぁっ!」
 こればかりは悲鳴を上げずにはいられなかった。
自分の中にある狼の肉棒がびくびくと跳ね上がるのを直腸で感じ、虎はさらに興奮してきた。
狼が腰を振るたびに、ぐちゃぐちゃとした音が鳴り虎の下半身を甘い快感が包む。
いつの間にか痛みはなくなり、ただひたすら快感だけを感じていた。
「お前のケツたまんねえ・・・。すぐいくぞ。」
「ああ、俺もいく・・・いくぞっ!」
 周りにわざと聞かせるようにして大声で叫ぶと、
虎は自分の股間に感じる視線と、尻から感じる快感とだけで再び射精した。
大きな根がびくびくと振るえ辺りに白濁液を撒き散らす。
それを浴びながら、狼も虎の直腸内に精液を放っていた。
 虎と狼の荒い息遣いが静かな村に響く。
狼は上体を起こすと再び虎の足をつかんだ。
「まだ、一発やそこらじゃ終わらせねえぞ。」
 そういうと狼は肉棒を挿入したまま虎を回転させうつ伏せにさせた。
「うわあっ!」
 狼の硬い肉棒が虎の直腸をこれでもかと刺激する。
無理やり四つ這いにされた虎は動物のように後ろから犯される形になった。
狼の肉棒が出入りするたびに虎は快感を感じうめき声を上げる。
「あっ、いいっ、いいっ!!」
 完全に尻の快感に目覚めた虎は、たくさんの村人たちの前で尻を犯され快感の声を上げ続けた。
狼が虎の頭をつかみ無理やり上体を引き起こす。
再び自分の股間が見られる状態となった虎はそれだけで尻を強く締め付けた。
「そうだ、しっかりしめろよ。この露出狂が!」
 狼の言葉にも虎は快感の悲鳴を上げながら射精することしかできなかった。

 

 


 村人の中から小さな影が飛び出した。
アトラとともにいた少年、エルが飛び出してきたのだ。
彼が手にしている、体に比べてずっと大きな剣は先ほどアトラが投げ捨てたものだった。
少年は虎と狼を囲むようにしてたっていた盗賊たちを斬り飛ばす。
事態が飲み込めない盗賊たちはエルの剣で次々と倒れていった。
「てめえっ!」
 狼がとっさに刀を手に取り、虎に突きつける。
「こいつが・・・」
 がぎぃっ、と鈍い音を立てて狼の手にしていた剣が根元から消えてなくなった。
エルが斬ったと気づくまで狼はしばらくの時間を要した。
その間にも周りで見ていた盗賊たちが襲い掛かってくる。
「鬱陶しい!」
 そう叫び、エルは自分に向かって襲い掛かってくる盗賊たちを片っ端から切り捨てた。
数十人はいたはずの盗賊たちが1分とかからずに全員地に伏していた。
「お前・・・。」
 狼が股間を露出したまま呆然とエルを見上げた。
「『剣聖』の噂くらい聞いたことあるでしょ?」
 にこやかにそういうとエルは手にした剣を狼に向かって振るった。

 

 

「まったく、おかげであの村に泊まれなくなっちゃった。」
 焚き火を囲みながら少年は不満そうにつぶやいた。
「申し訳ありません・・・。」
 従者である虎が申し訳なさそうに頭を下げた。
「別にアトラが悪いわけじゃないけどさあ。さすがに村人の前で射精したのはまずかったね。」
 『剣聖』の二つ名を持つ少年は苦笑しながらそういった。
「う・・・。」
 虎が一気に赤面する。
そんな虎に少年はもたれかかるようにして耳打ちした。
「ところで、気持ちよかったのなら僕にも教えてくれない?」
「え、エルさま!?」

 

 これから、二人の旅はさらに充実したものになった。

 

 


                                             完