絡む視線



 掻き分けた藪や小枝が大きくしなり、何度も俺の腕や顔をたたく。
それでも俺はお構いなしに走り続けた。
鎧を着けた体は重く、気ばかり早って転がるように進んでいる。
何度も転びそうになり、小さながけを滑り降り。
一瞬足をとめて振り返る。
背筋を何か冷たいものが走りぬけた気がした。
俺は再び走り出す。
先ほどから俺を追いかける視線から逃れるために。




 視線に気づいたのはもう2〜3時間ほど前のことだ。
隣町から自分の町に戻る途中の道で、突然誰かの視線を感じた。
あたりを見回しても、誰も俺のことを見ている様子はない。
それどころか日が沈むにつれてやがて周囲には人の姿が見えなくなった。
ひょっとしたらただの勘違いかもしれない。
なんどか自分にそう言い聞かせたが、どうしても納得ができない。
今でこそ町の自警団をしているが、これでも昔は傭兵としてならした身だ。
自分の命を何度も救ってきた直感をただの勘違いで終わらせることはできない。
相手の姿が見えるのならとっ捕まえてしまえば済む話、腰に下げた剣は伊達ではないのだから。
 だが相手がどこの誰かわからないのでは勝手が違う。
とにかく逃げないと、と思った。
視線の質はあまりにもどろどろとした、邪悪といっても差し支えのないものだったから。
とっさに道をそれて森の中に飛び込む。
背の低い木が生い茂っていたが、幸い仕事の帰りなので全身が鎧に包まれている。
フルプレートを着て走るのは少しつらいが、竜人である俺は普通のヒト達よりは体力に恵まれている。
相手が誰か知らないが、10分も走れば着いてこれなくなるだろう。
そう考えて俺は森の中を走り出したのだ。




「くそっ!」
 走っても走っても、視線は追いついてきた。
いっそ迎え撃とうかと立ち止まったりももちろん試した。
だがいつまで経っても視線を感じるだけで決して姿を現そうとはしないのだ。
生理的な嫌悪感が付きまとう視線を、正体もわからないままつけ続けるのはさすがに耐えられない。
とにかく一刻も早くその視線から逃れるため、俺は闇雲に走り続けていた。
既に日は落ち、辺りはずいぶんと薄暗くなっている。
あまり街道から離れては戻れないかもしれない。
とはいえあまり月明かりが届くところに出ては、白い鎧を着ている今の俺は格好の標的だろう。
どうするか。
そう思っていた時、突然俺の足がとられた。
「うわっ!」
 思い切り地面に投げ出される。
考え事をしながら走っていたら木の根か何かに躓いてしまったらしい。
辺りを警戒しながらすばやく身を起こす。
顔を上げると、頭上に丸い月が見えた。
俺がいる場所は、まるで木が避けるかのように広がった半径5mほどの狭い空間だった。
 今日は満月だったのか。
道理で明るいはずだ。
そんな場違いなことを、空を見上げながら考える。
がさり、と音が聞こえた。
ゆっくりと音がした方を振り向く。
その先にいたのは一人の男だった。
「こんばんは。」
 にこりと男が笑う。
見た目はひげ面の、商人風の男だった。
人のいい笑顔を浮かべている、ように見えるだろう。
だが俺はすぐに気づいた。
先ほどからずっと着いて来ていた視線の主は、この男だ。
人のいい笑顔の下にはあの悪意が隠れているのだ。
俺は地面に手を着いたまま男をにらみつける。
それでもまったく意に介した風もなく男は笑っていた。
 30代前半くらいの大柄な人間種の男。
見ている分にはまったく無害な男。
だがまとわりつくような不快な視線は確かにその男のものだ。
印象と外見がまったくつりあわない。
どうしていいのかわからず、俺は無言でにらみ続けた。
「うーん、そんなに警戒しなくても…。」
 男が困ったような笑みを浮かべた。
濃い髭が口元を隠しているが、動きから笑顔を浮かべていることは見て取れる。
俺は男から視線をはずさないようにしながら、ゆっくりと起き上がった。
突然地面が激しく揺れる。
思わず俺は再び地面に手を着いた。
慌てて辺りを見回すが特に揺れた様子はない。
目の前の男も何事もなかったようにこちらを見つめている。
俺がおかしい…のか?
「もうしばらく、そうやって這いつくばっていてもらえませんか。
意外に、そそるので。」
 そう言って男が笑った。
やはりこの男が俺に何かしているのか。
意地になって立ち上がろうとするが、地面から手を離すと大きな揺れが俺を襲う。
これじゃ、まともに逃げることもできない。
いや。
視線の主が出てきたんだ、ここで決着をつけるのが一番だろう。
「何者だ?」
 俺の問いに男が微笑む。
「まあ、名前なんてどうでもいいじゃないですか。」
 別に名前を聞きたかったわけじゃない。
素性を知りたかっただけなのだが、相手はそれも話すつもりはないようだ。
「ただちょっと、貴方に興味がありまして。
どうです、私の奴隷になるつもりはありませんか?」
「は?」
 あんまりといえばあんまりなその発言に俺は思わず絶句していた。
だってそうだろう、俺だってもう数十年生きているがこんなことを言われたのは初めてなのだから。
こいつはひょっとして、あれか。
少しおかしいのか…。
「悪いがお断りだ。」
 地面に手を着いたままはっきりといってやる。
まあこういっただけで諦めてくれるのならここまで追いかけてきたりもしないだろう。
予想通り男はまったく意に介した様子もなく、笑顔でこちらに歩み寄ってきた。
「まあそう言うだろうとは思っていましたので。
だからそうやって足止めしてる訳なんですよ。」
 ということは俺が今立てないのはこいつのせいか。
何をしているのかは知らないが、殴り飛ばしてやれば直るだろう。
そう思って、俺はバランスを崩しながらも無理やり走った。
正確には倒れこむようにしながら強引に前に進んだ、といったところだろう。
思ったよりもまともに進むことが出来ず、案の定男は易々と俺の拳をかわした。
「悪い話じゃないと、思うんですけどね。」
 男の声が後ろから聞こえる。
俺はよつんばいになりながら、振り返って思いきり男を睨みつけた。
笑顔を浮かべているはずなのに黒く、深い目だ。
俺はまっすぐにその目を見つめる。
そうしていないと男の視線に負けてしまう気がした。
「とりあえず、脱いでみてもらえませんか。」
 何をバカな。
そう思った瞬間、頭の上から大量に蛇が降ってきた。
「んなっ…!」
 慌てて蛇をつかんでその辺りに放り投げるが、蛇が多すぎて対処できない。
ずるずると音を立てて、蛇はどんどん俺の鎧の中に入っていった。
鎧からはみ出た尻尾をつかんで引きずり出すが、もちろんそれだけでは追いつかない。
これでは鎧を脱ぐほかにないだろう。
そう考えてから気がついた。
この蛇は、俺を脱がせるためにコイツが作り出したものだ。
「てめえ…!」
 俺は男を睨みつける。
もちろんこんなに大量の蛇を用意していたわけではない。
おそらく先ほどから地面が揺れて感じるのも、この蛇の大群も幻術によるものだろう。
魔術の一環で、相手の感覚をのっとるものだ。
「ようやく気づきました?」
 そういって髭に覆われた口をゆがませた。
その間にも蛇は俺の体を這い回る。
鎧の下に着ているインナーの中にもぐりこみ、わき腹を胸をとどんどん俺の体に絡み付いてくる。
「ッ!」
 乳首を舐められた気がした。
蛇のというよりも、人間の舌で舐められたような感覚だ。
それは乳首にとどまらず、胸を、腹を、太ももを。
股間を避けるように全身を這いずり回る。
幻覚だとわかっていても、耐えられるものではない。
俺は諦めて鎧の留め金に手をかけた。
ばちん、と音がして留め金がはずれる。
「いいですよ、その調子です。」
 もちろんこんな男に脱いで見せてやるつもりはない。
俺は小さな隙間だけ空けると手を突っ込み中の蛇を引きずり出していく。
「そんな開け方しても、無駄だと思いません?」
 しかし蛇の量は尋常じゃない。
引きずり出すよりも開けた隙間から入るほうが断然多かった。
俺の体はどんどん蛇に舐め上げられていく。
そして突然。
「アアッ!」
 俺の股間に強い刺激が走った。
いままで刺激のなかった部分は、強すぎる快感を俺に与える。
なぜこんなにも刺激が強いのか。
理由はわからなかったが、今までにないほどの快感に俺は戸惑った。
とにかく蛇を引き離さなければならない。
そう考えて俺は下半身の留め金に手をかけた。
 全身を覆っているように見える鎧だが、それを着ている間だってトイレにくらい行く。
着ている本人には下半身周りはすぐに着脱できるようになっている。
俺は留め金をはずして下半身を露出した。
既に俺がつけていた下着は蛇に食いちぎられたのか、ぼろぼろになっていた。
四つんばいだから、股間周りはアイツには見えないだろう。
尻も大きな尻尾が隠してくれている。
大丈夫だと考えて俺は既に役目を果たしていない下着を破り捨て、大きくなってきているモノに絡みついた蛇を引き剥がした。
膝を着き、肩を地面に着け両手で蛇をむしりとる。
どんどん上がってくる蛇を、俺は両手でどんどんむしりとっていく。
こうしている間は股間への刺激は無いに等しい。
なんとか打開策を考えないと。
「いいですねえ、その格好。」
 男の声が聞こえる。
恥ずかしさで顔が赤らむのがわかったが、今は無視だ。
「くそっ!」
 だが突然状況が変わった。
股間にぶら下がったモノを目指していた蛇たちが、尻にも群がり始めたのだ。
脚を、尻尾をはいずりながら尻の奥にある穴に群がり始める。
もちろんその間にも股間を目指して蛇たちがはいずってくる。
俺は尻尾を振り回して蛇をはじくしかなかった。
「ぐっ!」
 内股を登った蛇が、俺の玉に絡みつく。
相変わらずその蛇は、人の舌のように暖かく柔らかい。
「いいお尻ですね…。
それに股の間から覗いているものはずいぶんと大きそうだ。」
 男の満足そうな呟きが聞こえた。
慌てて振り返ると、少しはなれたところで男がしゃがみこんでいる。
蛇を追い払うために尻尾を動かしたから、尻が丸見えになってしまったのだ。
だがもちろん止めるわけには行かない。
蛇が俺の尻にたどり着いたら何をされるかわからないからだ。
「そろそろ次に行きましょうかねえ。」
 男がそう言った途端だった。
蛇たちが突然溶け出し、ゲル状になってしまう。
「これは…!」
 嫌な予感がした。
ずるりと、液体が俺の内股を這う。
ゲルになっても動きは変わらず、やはり俺を舐めるように全身を這いずり回る。
変わったことといえば、手でつかめなくなったことだけだ。
あっという間に俺のサオが、玉が、そして尻がゲルに包まれていく。
「よせっ!」
 俺は股間を諦め、なんとか尻から入ろうとするものを追い払おうとする。
だがいくら手でつかんでも、尻尾を振り回しても侵入を防げるはずも無い。
あっという間に俺の中に冷たいゲルが侵入してきた。
それとほぼ同時に、股間も全て包み込まれてしまう。
「あああああっ!」
 俺の中でゲルが動き回り、そして俺のサオを絞るようにゲルが前後する。
サオを包んだゲルを取り除こうと強く握り手を動かすが、払われた先からどんどんゲルに包まれていく。
尻の穴に指をいれ中のゲルを掻き出すが、こちらも後から後から入ってくる。
これでは自分でサオをしごき、尻を弄っているだけだ。
さらにあの男にはこのゲル状のものは見えていまい。
ただ俺がケツを突き出し、尻の穴を弄りながら一人でサオをしごいている。
男にはそう見えているのだろう。
「くそっ!」
 俺にはもちろん尻を弄る趣味なんてない。
ありもしないオナニー風景を、この男は楽しんでいるのだ。
屈辱に俺の顔が赤く染まる。
なんとかしてやめさせないと。
「条件さえ飲めば、やめてもいいですよ?」
 男が優しく言った。
もちろんこんな男と取引するつもりなんてない。
しかし完全に幻術に嵌ってしまい、今の俺ではなす術も無い。
話だけでも聞く振りをしたほうがいいだろう。
俺は地面に顔をこすり付けるようにして動かし、男を見る。
「仰向けになって、大きく脚を開いてください。
そうしたらそれ、止めてあげますよ。」
 髭をいじりながら男は言った。
本当にそれだけだろうか。
そこからなし崩しに条件を突きつけてくるだろう。
だがこのままでは埒が明かないし、何よりこんな強制的な自慰行為はすぐにでもやめたかった。
俺は両手を地面につき四つばいになると、意を決してそのまま仰向けに転がった。
鎧が地面を削る音が聞こえる。
俺は目を閉じ、羞恥心をこらえながらゆっくりと脚を開いた。
おそらく大きく立ち上がったモノが男にはよく見えていることだろう。
満月であることがこんなに恨めしく思えたことは無い。
この明るさなら、おそらくその陰影まではっきりとわかっているはずだ。
大きく開いた雁も、絡みつくような血管も。
 俺が脚を広げると、満足したようにゲルは動きを止めた。
ふっと消えた刺激に俺は思わず安堵のため息をつく。
「いいですね…。」
 そう言って男が俺の元に歩み寄りその脚に触れた。
「私はね、この色の境目がたまらなく好きなんですよ。」
 男の指が俺の脚をなぞる。
確かに俺の腹側は色が白く、背中側は緑色に染まっている。
だがそんなもの竜人であれば一般的な特徴だ。
この境目を見るたびにわざわざ欲情しているのだろうか?
「それに、竜人はとても立派ですしね。」
 男の手が俺の体色の境目をはずれ、天を衝いているサオに触れた。
指先が裏筋を上り、そのまま鈴口に触れる。
快感がそれに伴って俺を駆け上り、体がびくんと跳ねた。
「てめえっ!」
 恥ずかしさを隠すように俺は腕を持ち上げて男を殴りつける…はずだった。
持ち上げたはずの腕は地面に張り付いて、持ち上げることも出来ない。
見れば先ほどまでのゲルが固まって、俺の腕を地面に縫いとめていた。
「この野郎…!」
 足で蹴りつけてやろうとしたが、足首も既に固まっている。
尻尾も試すまでもなく動かなかった。
肘をつき、上体を起こした姿勢のまま俺は完全に固まってしまった。
怒張したモノを見せ付けるように、脚を広げたままで。
「先走り、出てきましたよ。」
 俺の亀頭を撫で回していた男の指先が滑らかに動き出す。
俺は歯を食いしばり、漏れそうになる声をこらえた。
雁を、鈴口を遊ぶように弄繰り回す。
「まあでも、あまり焦らすのも好みじゃないんですよね。」
 そう言って男は指を離した。
快感から開放され、俺は天を仰いだまま大きく息をついた。
「ああああああっ!」
 その瞬間を狙ったように、俺のサオが暖かいものに包まれた。
慌てて顔を起こせば、俺の股間に顔をうずめた男が見える。
ずるずると音を立てて男は俺のものをしゃぶりあげた。
「よせ、てめえ!」
 何とか体を動かそうとするが、鎧がガシャガシャと音を立てるだけで全く動くことができない。
その間にも唇は俺のサオをしごき、舌が俺の亀頭を攻め立てる。
湿った音が辺りに響き、恥ずかしさと快感でおかしくなってしまいそうだった。
「くっ…ふあっ…!」
 情けない声が口から漏れる。
俺は手を握りしめて必死で耐えた。
男が口を離し、俺のサオにほお擦りをする。
髭がジョリジョリと音を立てて俺に刺激を加えた。
「感じてくれているみたいですね。」
 嬉しそうに男が言った。
視線をやれば、上目遣いにこちらを見つめている。
思わず俺は目をそらした。
再び俺のモノが暖かいものに包まれる。
やわやわと玉をもてあそばれ、尻の穴にも指が這わされる。
「頼むから…やめてくれ…。」
 どうあっても動かない手足に、耐え切れない快感。
意識しないように勤めても、俺の感覚は全てその部分に集中してしまう。
感じたくないのに感じてしまう。
相手がこの男でなければ、あるいは最高のセックスになったのかもしれない。
これだけの快感を感じることはそうないだろうから。
激しく吸い上げられ、俺の体が震えた。
「まあそう言わず一緒に、ね。」
 そういいながら男は体を起こし膝で立つ。
男は俺に見せ付けるようにゆっくりとズボンを下ろした。
毛深い体に少し出た腹、そしてこれ以上なく大きくなっているであろう男根。
それを見て、俺はこれから犯されるのだと悟った。
「いやだ…。」
 首を振り、必死で否定する。
だが手足を動かすことも出来ず、俺はただ男がにじり寄ってくるのを見ているしかなかった。
男が俺に覆いかぶさり、俺と男の股間が擦れ合う。
唾液にまみれた俺のモノと、先走りに濡れた男のモノ。
擦れあうだけで快感が俺の背を駆け抜ける。
「さっきも言いましたけど、焦らすのは趣味じゃないので…。」
 そう言って男は一旦腰を浮かすと、俺の尻に熱いモノをあてがった。
犯される。
それだけは嫌だ。
「あああああああっ!」
 だが否定する暇もなく、男は俺の中に侵入を果たしてしまった。
「ああ、先程自分で弄ってましたから…入りやすいですね。」
 男がいやらしい笑顔を浮かべて呟いた。
俺は突然の痛みに、全身をこわばらせて耐える。
そんなことはお構いなしに突き入れられる腰。
俺は思わず男のモノを締め上げた。
「そんなに締めたら…すぐ終わってしまいますよ。」
 男の顔が快感にゆがむ。
体を起こし、俺の脚をつかんでさらに腰を振った。
「あっ…くっ…うん…。」
 何度も何度も突き入れられる腰。
そのたびに俺の口から耐えるような声が漏れた。
男が満足げに微笑むと俺に優しく口付ける。
尻を犯され、口を塞がれ。
そして男の手は小さくなっていた俺のサオを捕らえた。
唾液でもつけられていたのか、ぬるぬるとした感触が俺の股間を包む。
その刺激に、俺はあっという間に大きくなってしまった。
「あっ…あっ…んっ…。」
 腰を突き入れられるたびに、そしてモノをしごかれるたびに。
俺の口から嬌声が漏れた。
それは間違いなくあえぎ声だ。
くやしいがもう止めることすら出来ない。
「いいですよ、貴方の中…熱くて柔らかくて、とてもよく締まる。」
 耳元で囁かれて、俺は恥ずかしさを耐えるように目を閉じた。
目を閉じることで股間の刺激に意識が集中する。
突然激しく、腰が突き入れられた。
「かあああっ!」
 男のモノが、俺の奥で何かに触れた。
前立腺というやつだ。
話には聞いたことがあるが、体感するのは初めてだった。
男は満足そうに微笑むとそのポイントを狙って何度も腰を振ってくる。
「やあっ、だ、だめ、だあああっ!」
 男の手が俺のモノから離れた。
尻からの強すぎる刺激に、俺は触れられずとも先端から体液を溢れさせる。
俺の目じりから涙が流れる。
このままじゃ尻だけでイかされる。
そんなのは嫌だ。
せめて、せめて扱いて…。
突然男の動きが止まった。
「イきそう、ですか?」
 男が耳元で囁いた。
俺の顔が羞恥で熱くなる。
「このままイきます?
男として弄られず、尻掘られるだけで。」
 男が囁く。
そんなのはいやだ、絶対に。
「触って欲しいですか?」
 表面に触れるか触れないか、ギリギリのところで俺の亀頭をなぞってくる。
俺が躊躇すると、手がすっと離れた。
「このままがいいみたいですね。
このまま触られることなく、尻だけで。」
 男がまた激しく腰を振り始めた。
的確に俺の弱点を衝いてくるその腰使いに、俺は耐えることも出来ず声を上げ続ける。
このままでは本当に、尻だけでイかされてしまいそうだった。
一瞬だけ迷い、俺は叫ぶ。
「嫌だ、頼むっ!
扱いて、イかせてくれっ!」
 もうダメだ。
男に自分のモノを扱いてもらうよう懇願している。
優しく微笑みながら、男は俺のものを強く握った。
強い刺激と妙な安堵感が俺を包む。
「気持ちいいですか?」
 男の問いに俺は何度も頷く。
もう恥じも外聞もない。
ただ俺は快楽を貪るために、この男に支配されていくのだ。
「気持ち、いい…!」
 俺は素直に答えた。
男は俺をえぐるように腰を振り、追い立てるように扱き上げる。
俺は自分から腰を振り悦楽に浸っていった。
脳髄にまで快感が刻み込まれていくのがわかる。
「私もそろそろっ…!」
 男の動きが早くなる。
絶頂が近いのだ。
このままじゃ中に出される。
それは。
「やめっ…」
 俺が言い終わる前に、男の熱い体液が俺の中に溢れた。
「あああああああああっ!」
 俺が叫んだのは男としての尊厳を崩されたからか。
それとも快感に耐えられなくなったからなのか。
「ダメだ、イクっ、イくっ!!!」
 俺の絶叫を聞いて、男の手が更に早くなった。
あっという間に追い立てられて、俺は絶頂を迎える。
「あ、くっ、ああああああっ!」
 何度も何度も男の手の中で震え、俺は射精を繰り返した。
鎧の上に大量の精液が散らばっていく。
完全に、壊れた気がした。





男が立ち上がり、俺を見下ろす。
「いい姿ですね。」
 そう言って微笑んだ。
尻から男の精液を垂らし、鎧の上に自らの体液を撒き散らして。
俺は呆けるように空を見上げた。
「どうぞ?」
 突然視界に汚れた男根が突きつけられる。
俺は一瞬だけ躊躇してから、それをゆっくりと口に含んだ。
もう戻れないのだ。
「じゃあ行きましょうか。」
 そう言って男は俺の口から抜き去ると、ズボンを上げてから俺の股間に触れる。
強い快感が俺の脳を侵す。
「…はい。」
 俺は這いずるようにして、男の後についていった。




                                                終