拾得物

 

 俺は大量のゴミが詰まった袋を二つ手に持ってゴミ捨て場へと歩いた。
本来はゴミの日の前夜にゴミを出す事はマンションで禁止されているけれど、どうせみんな夜に出してるんだ。
朝は五分でも長く寝たいしな。
とはいってもどうせ明日はたいした講義もないし、一日中寝ててもいいんだけども。
そんなことを考えつつ俺は廊下の端にある窓を開けた。
ここの真下がゴミ捨て場になっている。
「ゴミの自由落下劇場〜♪」
 ワケのわからないことを呟きながら、俺は一応窓の下に人がいないかを確認する。
「ん?」
 ゴミ捨て場にライトがついてるわけではないのではっきりとはわからないが、
どうも人影のようなものが見える。
その人影は既に出されているゴミにもたれかかるように倒れている。
「おいおい、冗談じゃないぞ・・・。」
 何かの事件だろうか。
だとしたら巻き込まれたら厄介だ。
いやいや、そんなことがそうそう起こってたまるか。
どうせどこかの酔っ払いだ。
文句言ってやる。
俺はそう決意するとゴミ袋を抱えたまま階段を駆け下りた。
扉をくぐり薄暗いゴミ捨て場へと直行する。
人影に当たらないように調節しながら俺はゴミ袋を投げ捨てた。
「・・・え?」
 近くに寄ってみて明らかにそれがヒトでないことが見て取れた。
黄色い毛皮。黒い縞模様。ピンとたった耳。細長い尻尾。
「と、虎・・・。」
 わざわざ一つずつ確認しなくてもわかる。
コレは虎だ。
虎が仰向けに倒れている。
「何で虎・・・。ペットが逃げ出したとか、そんなのか?」
 下手に音を立てて虎が目覚めないように、俺は注意しながらゆっくりと後ずさった。
虎が目覚めたらすぐわかるように俺は凝視する。
そこで微妙な違和感に気がついた。
フォルムがおかしい。
仰向けに倒れた虎の手足がまっすぐ体にそって伸びるなんてことがあるだろうか。
よつばいで生きる生物が仰向けになったら左右どちらかに体を倒し、
その方向に足を投げ出すのが普通じゃないのか。
少なくとも実家の猫はそうだった。
見る限りではこれは人間と同じ寝方だ。
そう思ってよく見れば手足が妙に長い。
しゃがみこんでその体を横から確認すると、背骨の湾曲も虎のそれよりも人間のそれに近いことがわかる。
なによりおかしいのは両足の付け根にある性器。
動物のモノは普通肉の筒のようなものに納まっており、使用時にだけ飛び出すはずだ。
目の前に見えているそれは明らかに人間と同じ。
正確に言えば、サイズはとんでもないが。
「もしかして・・・獣人・・・。」
 本来いるはずのない生物。
獣人。
俺は迷った。
このまま放置していたら大問題だ。
警察どころか場合によっては自衛隊が来たりして・・・。
かといって連れて帰るのも気が引ける。
おそらく獣人は人間より運動能力に優れてるだろうし、彼が凶暴な性格でないとは誰も保証しない。
連れ帰ったら目覚めたとたん殺される可能性だってある。
俺はその場で少し悩むとすぐに結論をだした。
つまり、獣人に殺されるなら本望。
俺は100キロは軽くありそうな巨体をなんとかして持ち上げると死ぬ気で自分の部屋に向かった。

 


「ぐっはあ!」
 俺はなんとか獣人をベッドの上に放り投げる。
呼吸を整えると、いまだに目覚めない虎獣人を明りの下であらためて観察した。
身長185センチ、体重100キロ強(共に推定)。
美しい毛並みの下には適度に盛り上がった、滑らかな筋肉の盛り上がり。
・・・そして、長く太い性器。
「かっこいいなあ・・・。」
 俺は思わず目の前にぶら下がった果実に手を伸ばした。
まだ血の通ってないそれは手ごたえもやわらかく、持ち上げるとだらんと垂れ下がる。
俺は獣人がまだ目覚めていないのを確認してそれを口に含んだ。
ここしばらく男のモノを咥えていなかったために、その味が妙に懐かしい。
というか獣人も同じ味なんだなあ・・・。
俺が舌でカリの周りをなぞってやると、少しずつ血が通い固くなってくる。
そのまま刺激を与えつづけているとやがて竿は反り返り、信じられないような大きさと堅さのものが姿をあらわした。
口から吐き出しまじまじと見つめる。
赤黒く、血管が絡みついている太い根が目の前でびくびくと震えている。
「すげえ・・・。」
 俺がそれに見とれていると、後頭部に手が回された。
思わず獣人の顔を見る。
「つづけろよ・・・。」
 そう言って獣人は俺の頭を引き寄せる。
俺はその動きを受け入れるように股間へと顔をうずめた。
口が巨大な栓でふさがれたように、隙間なく埋まる。
それでも俺は必死でモノを舐めまわした。
獣人の息が荒くなる。
俺は口だけでなく、手も使ってさらに獣人を攻め立てた。
左手でタマをもみながら、右手で口からはみ出た竿をしごき上げる。
「ウッ、ウウッ!」
 獣人が小さくうめいて、俺の口の中に生臭い匂いが広がった。
「がっ、ぐへっ!ごへっ、ぼへっ!」
 思わず俺はすべてを口から吐き出す。
獣人のモノは大きく跳ね上がりながら俺の顔に大量の精液を吐き出した。
俺は酸欠で呆然としながら獣人の顔を見る。
獣人は快感の余韻に浸るように目を閉じたままだった。
俺は大きく深呼吸をするとタオルを持ってきて後始末をはじめた。
「・・・。」
 獣人は何も言わず、目を閉じたまま沈黙している。
俺は何を話していいかわからず無言で作業を続けた。
一通り作業が終わり、どうしようか悩んでいたころに彼が口を開いた。
「・・・ここ、どこだ。」
 なかなか渋い声が聞こえる。
顔を見ると俺をまっすぐに見つめている。
理知的な瞳で、なかなかの男前じゃないだろうか。
思わずほうけてしまうが、その視線が俺の答えを待ったものだと気づいて慌てて俺は住所を言った。
「・・・日本?東京?」
 やっぱり聞き覚えはないらしい。
お互い聞きたいことはたくさんある。
「とりあえず、自己紹介からだな。」
 上体を起こしながら彼は言った。
「俺はランス。エイリア王国で騎士をしているんだが・・・しらないだろうな。」
 俺は彼の言葉に頷いた。
彼の口から小さく溜息が漏れる。
「俺は、川村良紀。一応大学生やってるんだけど・・・大学って知ってる?」
 彼は首を横にふった。
もしかして生活様式から、全部違うんだろうか。
だとしたら大前提が違うんだからまともに会話するのも大変かもしれない・・・。
「とりあえず、現状の把握がしたい。
俺の記憶は仕事をしていたところで途切れて、次に目がさめたらお前が俺のモノを咥えていた。
お前は、俺と会ったときはどうやって会ったんだ?」
 おもわず俺は赤面する。
いくら相手が憧れの獣人だからといっていきなり咥えるのはないよなあ・・・。
「あ、俺はゴミ捨て場でアナタが倒れてるのを見つけて・・・。
で、とにかくここに・・・俺の部屋に運んだんです。
咥えたのはその・・・あんまり立派なんで・・・ごめんなさい。」
 恥ずかしくて耳まで赤くなってるのが自分でもわかる。
だがランスのほうは全く気にしていないようだ。
「つまりどうして俺がここにいるかはわからんわけか・・・。」
 俺はふと思いついて本棚にかけより一冊の本を引っ張り出す。
中学校時代に使ってた地図帳だ。
もう使うこともないと思っていたが、貧乏性も結構役に立つもんだ。
俺は世界地図を広げるとランスの前に置いた。
「・・・?」
「世界地図。」
 俺の言葉に怪訝そうな顔を見せた。
「冗談はよせ。」
「冗談じゃないよ。」
 ランスがまっすぐに見つめてきて俺は思わずどきりとしたが、そのまま見つめ返す。
俺は世界地図で東京がどこに位置するかを指し示した。
「ホントに、世界地図か?」
 俺は大きく頷いた。
ランスは頭を抱えている。
やっぱりベタに異世界とかから来たんだろうな・・・。
なんてことをぼんやりと考えていると、ランスが急に顔をあげた。
「つまりあれか。タイムスリップとかか。」
 ちょっと違うような気がする・・・。
というかそういう概念あるんだなあ。
「いや、たぶん異世界がどうとかじゃないかなあ。
ベタだけど。」
「異世界か・・・。
そういえば文献でそういうのを読んだことがあるなあ。」
 ずいぶんと都合がいいなあ。
まあ簡単にわかってくれるほうが楽でいいんだけどさ。
「えーっと、俺がここにきた方法はわからないんだよな?」
「・・・うん。」
「じゃあ帰る方法もわからんよな・・・。」
 彼は大きく落胆したようだった。
見知らぬ世界で、1人きり。しかも全裸。
不安なんだろう・・・。
「ええと・・・。」
 彼が落とした視線をこちらに向けた。
「とりあえず、しばらくはうちにいていいよ。
行くところないと困るだろうし・・・。
なにより、獣人ってのは俺たちの世界にはいないから人目についたらまずいし。」
「そうなのか?」
「最近は遺伝子技術とか、そういうのあるからいても不思議じゃないのかも知れないけど・・・
少なくとも世間一般に認められてる存在じゃないから。」
「そうか・・・。」
 納得したのかわからないけれど、少なくとも彼は僕の言わんとしている事を察してくれたようだ。
ぐるるる、と音がした。
一瞬彼が喉を鳴らしたのかとビックリしたが、腹を抑えているところを見ると腹の音だったらしい。
「あ、なんか食べるもの持ってくるよ。」
 そういって俺は慌てて台所へたった。
冷蔵庫をのぞきながら俺は安堵の溜息をついた。
ものすごく緊張する・・・。
俺は冷凍庫の中から今日作ったハンバーグのタネを引っ張り出した。
コンロに火をつけてフライパンを暖める。
俺はその間に箪笥からTシャツとトランクスを引っ張り出した。
全裸のままだと目には優しいが、精神衛生上よろしくない。
彼はそれを受け取るとそれを身につける。
俺の身長は170ちょい。彼の身長は185(目測)。
胸板も胴回りも彼のほうが大きく、全体のボリュームが違う。
俺のシャツもパンツもぴちぴちだった。
「うわっ、これはこれで破壊力が・・・。」
 ぴちぴちのTシャツやトランクスはは筋肉を強調するだけでなく、乳首や竿の位置まではっきりと示している。
俺は鼻血が出そうなのを必死でこらえながら慌てて台所に戻った。

 

 

「さて。
これからどうするかだな。」
 ビックリするほど器用な箸使いでハンバーグを平らげたランスは一息ついてからそう言った。
「どうって・・・。」
「とりあえず俺はしばらくこの部屋から出ないほうがいいんだろう。
だとしたらしばらくはカワムラヨシキに頼むしかないんだが・・・。」
 どこか申し訳なさそうな雰囲気で彼はこちらに眼を向けた。
意外と表情がわかるもんだなあ・・・。
「あ、俺はヨシキって呼んでくれたらいいよ。
それより頼まれるのはいいんだけど・・・せいぜい図書館あたるくらいしか思い当たらないよ?」
「文献か。ああ、それで頼む。」
 いや、文献って言うか・・・ファンタジー小説くらいしかないんじゃないかなあ・・・。
とは思うものの世の中何があるかわからないんだし、
そう言ったところでがっかりさせるだけの事なのでひとまず伏せておく。
「じゃあ俺寝ていいかな?」
 もともとゴミを捨てたらすぐに寝るつもりだったんだ。
今日はもう疲れたから早く寝ようと考えていた。
こんなカッコイイ獣人と一緒にいて寝られるかどうかは疑問だったけど、早く寝てしまわないとまた襲ってしまいそうで怖かった。
「それじゃあ・・・。」
 俺はバスタオルをつかむとソファの上に寝転がった。
「なんだ、ここじゃないのか。」
 ランスが自分の隣のスペースをぽんぽんと叩く。
さすがにそこは誘惑が強すぎるよ・・・。
「いや、狭いし寝苦しいでしょ?俺はここでいいよ。」
「そういうな。家主のお前が遠慮してどうする。」
 そういうと彼はこちらに歩み寄り、軽々と俺を抱き上げた。
「わっ!」
 恥ずかしくて思わず暴れるがランスはまったく動じない。
まさか獣人にお姫様抱っこされるなんて・・・。
俺の鼻の穴から耐えていた鼻血が一筋流れ落ちる。
俺はランスにベッドの上に降ろされると、慌てて枕もとのティッシュで鼻血をぬぐった。
「さ、寝ようぜ。」
 そう言って彼は俺の隣にもぐりこんできた。
毛皮のふさふさとした感触が俺の肌を刺激する。
顔を上げれば優しげな黒い瞳。
うわっ、たまんねえよ・・・。
思わず欲情してしまった俺は気づかれないようにそっと腰を引く。
だがランスはそれに気づいたのか、俺の腰に手を回し自分のほうに引き寄せる。
どうしていいか固まっていると、彼のざらついた舌が俺の鼻の頭を舐め上げた。
「ん・・・。」
「さっき、お前イってないだろう。遠慮しなくていいぞ。」
 そう言って彼は俺の口の中に自らの舌をねじ込んできた。
やばいくらいに気持ちイイ。
キスするだけで脳の中心までとろけそうな、なんともいえない快楽が俺の体を駆け巡る。
俺は無我夢中で彼の体にしがみついた。
そうしないと狂ってしまうような気がしたから。
彼も俺を強く抱きしめる。
たまらない。
「もっと・・・。」
 俺は力の限り彼を抱きしめる。
彼もさらに力をこめて、それでいて俺が壊れないように気を使ってくれている。
ヤバイ。コレだけでイっちまいそうだ。
俺は必死で彼の手を自分の股間に導いた。
彼の大きな手が俺の竿を握る。
それだけで俺はイった。
「はあぁぁぁ・・・。」
 俺のパンツがびしょびしょにぬれる。
俺がイったことに気づいて彼はそっと手を離した。
「ごめん、いつもはもっと長持ちするんだけど・・・気持ちよすぎて・・・。」
 俺は恥ずかしくてしどろもどろで答えた。
彼は無言で再び口の中に舌を侵入させてきた。
俺は目を閉じてそれを受け入れる。
彼の手が俺のびしょびしょにぬれたパンツを脱がせた。
口をはなし、首筋から乳首にかけてを舐められる。
「うわぁぁぁ・・・。」
 気持ちよくて声を抑えることも出来ない。
少しずつ口は下がってきて、やがて俺の達したばかりのモノをくわえ込んだ。
ざらついた舌に触れるだけで俺のモノは簡単にいきりたち、
彼が少し動いただけで俺はまた射精した。
「もう、もう許して・・・。」
 俺は泣きそうなこえで必死に訴えた。
彼は俺の訴えを聞き入れ、再び俺の隣で横になると俺を強く抱きしめた。
彼の胸の中は気持ちよくて、なんだか涙が出そうになった。
まだあって数時間もたってない。
それなのに、俺はこのヒトがいとおしくてたまらなかった。
この瞬間が永遠であればいいと思った。
「ランス・・・。」
 俺は彼の名を呼ぶと目を閉じて、気だるい疲労の中で意識を手放した。