オークの拳がうなりをあげて俺に襲い掛かる。
一撃は俺の頬をかすめ、浅く肌を切り裂いた。
傷自体は見えないが、大きな出血も感じられずおそらくそう深くないだろう。
そんなことを半ば無意識に考えている間に、オークの第二撃が俺を襲った。
「うおっ!」
俺は咄嗟に身を低くする。
俺の逆立っている毛が、数本はらはらと宙を舞った。
まさに間一髪。
俺は後ろに飛んで間合いを離すと改めて手に持った槍を構えた。
オークがにごった目でこちらをにらみつけている。
「まずいな…。」
俺は呟いた。
サンドリアからオルデーる鍾乳洞へ向かう途中のラテーヌ高原で、
ゴーストに追われ、道に迷い、迷い込んだジャグナー森林。
この地の獣人は、明らかに俺より強い。
駆け出し戦士の俺にはサポートジョブの知識すらない。
格上相手に戦っていては結果は火を見るより明らかだ。
かといって逃げる隙すら、俺には見つけることができない。
俺は自分の手の甲に浮かぶ魔法の印を横目で確認した。
母国サンドリアでかけてもらった魔法、シグネット。
これがあれば瀕死の状態で国へ帰ることができる。
もっとも、まさに死の一歩手前になるらしいが…。
「クエーーーーーッ!」
チョコボの鳴き声が響く。
俺も、そしてオークも突然の鳴き声に一瞬動きを止めた。
無人のチョコボが俺の脇を通り過ぎる。
「ガルカぁ!ダブスラくらいうてるやろ!」
チョコボに気をとられていた俺に、妙な言葉が投げかけられた。
どこかの方言だろうか、なんだか怒ったような言葉だ。
「返事くらいせえやあああ!」
いや、正真正銘怒ってるんだな。
あわてて声の主を探すと、こちらに走りよる人間の男が見えた。
黒い髭を顔中に生やした彼は、東方の武器といわれる刀を構えている。
彼は言葉とは裏腹に、氷のように冷たい空気をまとっていた。
俺を助けてくれるようだ。
そこでようやく、俺は彼の言葉を思い出した。
汗で滑らぬよう改めて槍を握る。
「ダブル――――」
オークが振り向いた。
髭の侍に向いていた注意が、再びこちらに戻ったのだ。
俺の動きを察知してか、咄嗟に回避行動に移る。
逃がしてたまるか!
「スラスト!」
二段構えの槍が、オークを襲う。
一撃はオークの鎧にはじかれ、もう一撃はオークの肩を浅く切り裂いた。
だめだ、これでは弱い!
隙だらけの俺を見て、オークが汚く笑った。
「ようやった、あとは任せとけ!」
オークの拳が俺に届く前に、髭の侍が俺の隣に立っていた。
「五の太刀、陣風!」
侍の刀がオークを襲った。
振られた刀は旋風を巻き起こし、オークの体を切り刻む。
この一撃で…。
「グオオおオおおおお!」
オークの野太い声が響いた。
だが―――
「立っている…。」
そう呟いた俺の声には、はっきりと絶望の色が滲んでいた。
これでも駄目なのか。
まさにそう思った瞬間だった。
思わず俺は、オークに向かって一歩踏み出していた。
オークに引き寄せられたわけじゃない。
しかし、確かに俺に何かの力が働いたのだ。
俺は改めて後ろに下がりながら、目を凝らした。
「!!」
そして、気づいた。
辺り一体の空間が。
いや、世界が。
オークを中心に歪んでいた。
あふれるエネルギーは、すべてが中心を目指している。
高レベルな戦士たちは各々が持つ必殺技を駆使し、
それぞれを連携させることで超自然的なエネルギーを引き出すと聞く。
そう、今俺の目の前で起きているこの現象こそが。
「湾曲……!」
歪みによって生み出されたエネルギーがオークに向かってすべて雪崩れ込んだ。
俺は余波に巻き込まれぬよう、咄嗟に顔をかばう。
そして、目を開いたときにはオークが倒れこんでいた。
「ごくろうさん。」
呆然とオークを見つめる俺に声がかけられた。
先ほどよりやわらかい声に俺は振り向く。
改めて見れば、俺より頭一つ低い黒髭のヒューム。
戦闘前に感じた氷のような空気はもうまとっていない。
おそらく戦闘時における、精神集中の一種だったのだろう。
「ん?」
ぼんやりと見つめている俺に彼は人懐っこい笑顔を見せた。
ああ、俺は彼に助けられたのだ。
礼を言わなければ。
舌が回らない。
足元がふらつく。
「あ…。」
体力の限界だった。
俺は彼にもたれるように、倒れてしまった。
「おいおいおい!」
それでも彼は俺を咄嗟に抱きとめる。
見かけよりもずっと力が強いようだ。
「あら、新しい彼氏ぃ?」
かわいらしい、女の子の声が聞こえた。
首をめぐらせて見れば、チョコボに乗った赤毛のタルタルがこちらを見ていた。
おさげにした髪を左右に下ろしている。
「ほら、ワシってもてるやろ。
ちょっと歩いただけですぐ求愛されるんや。」
そういって髭の男は大きく笑った。
ガルカに求愛されてていいのか…?
「へー、ガルカの求愛って大胆なのねぇ。」
少女もニコニコと微笑みながら答える。
いや、タルタルの少女よ。
つっこむところはそこなのか?
というかお前ら、ツッコミはいないのか…。
手近な木の根元に腰掛け、タルタルの少女にケアルをかけてもらい
俺は何とか体力を取り戻していた。
「迷惑をかけてすまない。」
そういって頭を下げた俺を、彼らは笑顔で受け入れてくれた。
「よう言うやろ、困ったときはお互い様やって。」
「そうですよ、助け合いの精神ですよぉ。」
照れを隠すように二人は答えた。
タルタルの少女は先ほどからずっと変わらぬ笑顔だが、
髭の男は心持ち赤面していたりする。
顔に出るタイプなのだろうか。
「そうそう、自己紹介やな。
ワシの名前が東風。
侍やってる。
んで、こっちのちっこいんがミソノ。
いちおう白魔導士やな。」
髭の男、東風がそういって手を差し出した。
俺は差し出された彼の手を握る。
隣ではミソノがペコリと頭を下げていた。
「俺は、ポンズ。
俺はその…駆け出し戦士、ってところだな…。」
握手を返しながら俺も自己紹介をした。
俺がジョブで口ごもるのを聞いて東風は少しいぶかしげな表情を浮かべる。
横を見ればミソノもなんだか不思議そうな顔をしてこっちを見あげていた。
東風の手を離し、俺はあさっての方向を見上げた。
ああ、今日もジャグナーはいい天気だ。
来たのは今日が初めてだが。
「なーんか、事情ありそうやなあ?」
必死で視線をそらす俺に、東風が声をかけてくる。
ああ、人が必死で流そうとしているのに。
「駄目よ東風、ポンズさんがせっかくなかったことにしようとしてるんだからぁ。」
ミソノがのんびりとした口調でたしなめる。
おお、やればできるじゃないか!
「ちょっと噛んだくらい多めに見てあげないと。」
「そうじゃないいいいい!」
思わず俺は叫んでいた。
「言いにくいことがあるからわざと言葉を濁したんだよ!
わかれよ!」
思わずつっこんだ俺を、東風がにやにやとした笑みを浮かべながら見つめている。
ああ、俺のバカ…。
俺はがっくりとうなだれると、二人に理由を話し始めた。
「騎士志願見習い保留〜?」
東風の呆れた声がジャグナーに響いた。
どこにいたのか、俺のもたれていた木から鳥が数羽飛び去っていく。
恥ずかしいから…そんなに大きな声を出さないでくれ。
そんな俺の心の叫びもむなしく、東風は相変わらずの大声で続けた。
「なんやそれ、そんな情けない肩書き聴いたことないで。」
…声が大きいのも口が悪いのも、地なんだろう。
おそらく彼に悪気はない。
たぶん。きっと。
そう信じないと、やりきれない。
「ナイトのテストいうたらあれやろ。
なんか定年になった半分ぼけたような爺さんがあれとってこい、これとってこいいう…。」
悪意…ないよな?
思わず心配になって俺は隣にいたミソノを見た。
俺の視線に気づいたのかミソノはこちらを見ると、
俺の考えていることがわかったのだろうか、一瞬深刻な顔になって大きく頷いた。
「おなか、すきましたねぇ。」
わかってなかった。
俺は大きくため息をつくと、改めて東風に向き直った。
一応フォローは入れておいたほうがいいだろう。
「その…別に試験の内容に問題があるわけじゃないんだ。
ただ俺の運が相当に悪いらしくてな。」
思い出すだけで気分が暗くなる。
できればこの先は話したくないのだが。
東風の目は明らかに続きを促していた。
「…最初は反魂樹の根だった。
ゴーストを倒してドロップしたのはいいが…カバンが一杯で持って帰れなかった。」
呆れている。
東風が大きな口をあけて呆れている。
たしかに、これは俺が悪かったのだが。
「次は、オルデール鍾乳洞だ。
…大雨が降って増水して流された。」
まさかあんな洪水が起こるなんて。
滝のもとにたどり着くどころか、生きて帰るのもやっとだった。
「それから、今度は砂丘で変わった石をもってこいという話だった。
…数十匹はいる大トレインに巻き込まれた。」
ゴブリンだけじゃない、グールにボギー。
俺の知らないNMまで混ざってた。
「少し難易度を下げてもらえた、ラテーヌ高原。
…NM羊に踏み潰された。あれは本当に死ぬかと思った。」
あの時は逃げる暇さえなかった。
シグネットがなければ間違いなく死んでいただろう。
思い出すと情けなくて泣けてきた。
どれもそれほど難しい課題ではないのに、なぜか俺はことごとく失敗していた。
「んで今回はジャグナーでオークか…。
お前…運ないんやなあ…。」
東風の哀れむような言葉に俺は再びため息をついた。
まあ子供の頃からこんな人生だ。
いい加減、慣れもする。
「本当は今回は、オルデールにもう一度行ってモルボルのつるを取ってくるはずだったんだがな…。
すっかり道に迷ってしまって。」
俺の言葉に東風とミソノは顔を見合わせた。
お互い長いコンビなのだろう。
顔を見合わせ、目での会話で何事か決めたように二人そろってうなづいた。
そして二人同時に口を開く。
「わしらが手伝ったるわ。」
「ご飯、たべましょぅ。」
二人が発した言葉は全く違うものだった。
「いや、お互いの意思通じてないじゃないか!
さっきの頷きはなんだよ!」
俺の言葉に東風は少し考え込み。
「ノリ?」
ああ、まともな返答を期待した俺が悪かったよ…。
俺は頭を抱え込んだ。
ミソノの手作りだというおにぎりを食べた後。
東風の案内で、俺たちはオルデール鍾乳洞へとたどり着いていた。
ここに来るのは初めてではないが、いつ来ても薄暗い洞窟の雰囲気に俺は小さく身震いした。
「そうそう、忘れんうちに渡しとくわ。」
そういって東風が俺に何かを放り投げた。
落とさないように、あわててそれを受け取る。
受け取った後に手を開いてみれば、小さな青い石。
いや、真珠…?
俺が扱いに困っていると、東風が俺の手からそれを取り上げた。
「なんや、初めてかいな。」
そういって真珠を小さな袋に入れて、俺の首にかけてくれる。
「リンクパール。
これがあったら離れてても話はできるからな。
迷ったら呼べよ。」
そういって俺の胸元をポン、と叩いた。
リンクパール…。
今まで縁はなかったが、たしかフリーハンドで会話ができる便利なアイテムという話だ。
『あー、テステス。』
胸元から東風の声が聞こえた。
視線を胸元から東風のいた場所へ持ち上げると、
すでに東風の姿はなく少しはなれたところで何か呟いていた。
呟きはすべて俺の胸元から声となって聞こえている。
『オレの名前はポンズ、バツイチ子持ち32歳。』
「勝手なアテレコをするなッ!」
東風がパールを通して勝手に人の経歴詐称を始めていた。
俺は思わずパールに向かって大声で叫ぶ。
「さあ、それじゃあ手分けして探しましょうかぁ。」
ミソノが笑顔で言った。
まあ、正論なんだが…マイペースだなあ…。
俺が切り替えについていけない間に、ミソノは俺の横を通り過ぎ一人で走り去っていった。
「お、なんや。
ミソノはもういったんか。」
一人離れたところにいた東風が俺のそばに戻ってくる。
東風は軽くにぎった拳で俺の胸元をぽん、と叩いた。
「ほんなら、こんどこそナイトになろか。
心の準備はできとるか?」
東風の言葉に俺は頷いた。
「ああ。
どんな敵でも、倒してやるさ。」
そういった俺に東風は少し寂しげに微笑んだ。
『そっちおったかー?』
胸元のリンクパールから東風の声が聞こえる。
三人で手分けして探しているが、五分おきに東風の言葉が聞こえるだけでモルボルの姿は見当たらない。
「いや…もう少し奥を探してみる。」
マップを広げて道を確認する。
マップ上には仲間の位置を示すマーカーが動いていた。
自分の位置のマーカーを目で探し、仲間のいない方向を目指して歩く。
こっちで…あってるよな?
ぬるつく岩場に足元をとられないように注意しながらゆっくりと歩く。
一抱えはありそうな大きな甲虫が俺の横を通り過ぎていった。
あんな大きいのに襲われたらたまらんだろうなあ。
そう思いながら視線を前に戻す。
目の前に、スライムがいた。
「・・・っ!!」
思わず出そうになる声をあわてて抑える。
こいつは確か、音に反応するはずだ。
幸いこちらには気づいていない。
ゆっくりと、俺は音を立てないようにスライムから離れた。
『おーい、どしたー?』
もう少しで安全圏というところで、東風の声が聞こえた。
あわてて後ろを振り返る。
スライムと目が合った…気がした。
じりじりとすり足で後ろに下がる俺。
突然、俺のバランスがくずれた。
「うおおぉっ!」
地面が、ない!
俺は大声を上げながら階下へと落下していった。
一瞬後、俺はやわらかいものの上に投げ出されていた。
「な、なんだ…?」
なんとか体を起こし、自分の足元を確認する。
緑色の小高い丘…いや、これは…
「モルボルーっ!?」
俺は思わず叫んでいた。
今俺がいる場所は、まさにモルボルの頭の上だったのだ。
あわてて下りようとするが時すでに遅し。
モルボルの触手が俺の足に絡み付いていた。
足を引かれ、俺はモルボルの目の前で逆さづりになる。
武器を……!
そう思った瞬間、俺の上に何かが落ちてきた。
必死で首を持ち上げてみると、俺の脚とモルボルの触手に先ほどのスライムが絡み付いている。
「最悪だ…。」
もう無理かも知れない。
背中に背負っていた槍もモルボルに奪われ、
スライムはどんどん俺の体を這い上がってくる。
これは…ホームポイントに帰るしかないのか。
俺は確認するように自分の手の甲を見た。
「ない……!」
シグネットは、既に切れていた。
ホームポイントには既に戻れない。
武器も奪われてしまってもうない。
モルボルに手足を押さえつけられ自由もない。
そして今、モルボルの触手は俺を調べるように少しずつ防具をはいでいた。
防具のなくなったところをスライムが這う。
素肌に、スライムのぬるりとした感触がつたう。
気持ち悪い…。
小手が、靴が少しずつ奪われていく。
やがて俺は下着姿になってしまった。
「どこまで…」
どこまで剥げば気が済むんだ。
先に動いたのはスライムだった。
胸を、腹を這い回っていたスライムが下着の隙間から中に入り込んでくる。
「ッ!!」
俺は声を出すのを必死でこらえた。
スライムの、生暖かい感触が俺の股間を襲う。
なんとか逃れようと手足を動かすが、俺の体はモルボルによって空中に固定されている。
俺はその忌まわしい感覚を甘んじて受け入れるしかなかった。
竿を、玉をスライムが蹂躙する。
初めての感覚に、俺は我慢することもできずに反応を始めてしまった。
「やめろ…やめろおおぉお!」
俺の叫びは今にも泣きそうな声だった。
だがもちろんスライムは動きを止めたりはしない。
股間を襲う刺激に、俺のそこはついに最大まで大きくなってしまった。
「……ぁっ!」
必死でこらえていた俺の口から、嬌声が漏れた。
声に反応したのか、それとも俺の変化に気づいたのか。
モルボルの触手が器用に俺の下着を奪い取った。
大きく反り返った俺の男根があらわになる。
ガルカのモノは、人間たちに比べるととても大きい。
その大きさゆえに交配をやめたのではといわれることもあるほどに。
そしてその大きさはモルボルの太い触手でも十分に操れる。
スライムまみれの俺の竿に、モルボルの触手が絡みついた。
大きな口が、にやりと笑う。
「ぐうっ…」
モルボルの触手に締め付けられ、俺は声を漏らした。
スライムの一部が、モルボルに場所を譲るように移動する。
大きく開かされた俺の脚の間をくぐり、尻と尻尾の根元を這い始めた。
俺は尻に力をいれ、必死で内部への侵入に抵抗する。
だがモルボルはそれすら許さなかった。
俺の顔を狙うかのように、甘い吐息を吹きかける。
「ぁ……。」
ニオイが頭の芯まで響く。
全身の力が抜ける。
鋭敏に感じられる、スライムとモルボルの動き。
「…ぁああ、はぁぁぁ…。」
俺の口から小さな喘ぎがこぼれ出た。
感度が、上がっている。
モルボルの触手が、扱くように俺の竿を扱い始める。
「うあっ!ああっはっ!」
俺は声を押さえることすらせず、ただ快感に流されるままに声を上げていた。
力の抜けた尻から、スライムが少しずつ体内に侵入して刺激を加えている。
自分で自分を慰めた経験くらいはある。
だが、この快感はそれどころではなかった。
「いいっ、キモチ、いいいっ!」
モルボルの大きな舌が俺の胸を這い回った。
乳首を中心に、快感が全身に広がる。
スライムの一部と、俺の先走りが混ざり合いモルボルの触手が動くたびに
ぐちゃぐちゃと湿ったいやらしい音を立てた。
もっとして欲しい。
もっと気持ちよくなりたい。
「もっと…もっと激しくしてくれぇ!」
俺は自分から尻尾を持ち上げ、尻をさらす。
意図を汲み取ったのか、モルボルの触手の一本が俺の尻を撫で回し始めた。
だが俺が期待していたのはそんなことではない。
ゆっくりと腰を振りながら、俺は内部への侵入を待った。
「ふがあああああああ!」
突然太い触手が俺の尻穴を襲う。
その刺激に俺は叫び声をあげていた。
だが、内部への刺激は俺が求めていた快感をもたらす。
俺は快感をむさぼるように、自ら激しく腰を振りたてた。
「いい…いいっ!」
俺の竿はモルボルの触手に扱かれ、胸はモルボルの舌が這い回る。
尻穴も触手によって犯されており、全身をスライムが這い回っていた。
限界は、あっという間に訪れた。
「ダメだ、出る、出る!」
俺の言葉にもモンスターたちの動きは変わらない。
「イくッ!!」
俺の先端から、大量の精液が吹き出した。
あるいはモルボルの口に、あるいはスライムの体内に。
俺の精液のほとんどはモンスターたちに取り込まれていった。
生命力が削られたように、俺の全身から力が抜けていった。
それでも、モンスターたちの動きは変わらない。
死ぬまで、搾り取られるようだ。
「八之太刀・月光!」
二度目の射精が近づいていたとき、唐突にその声が聞こえた。
まるで月を描くように、刀が一振りで円を描く。
俺を縛り付けていた触手が緩み、俺はスライムごと地面に投げ出された。
危機を感じたのか、スライムは俺の体を離れて逃げ始める。
だが彼は見逃さなかった。
「ならびに、四の太刀・陽炎!」
彼の迫力がそのまま具現化したかのごとく。
刀の一振りが灼熱の炎を生み出した。
熱に溶かされ、スライムもあっという間に絶命する。
一瞬でモンスターを屠るその姿は、まさに風のようだった。
「ポンズ!」
そして、地面に残された俺に東風が駆け寄ってきた。
全裸でスライムの粘液にまみれた俺を、東風が躊躇なく抱き起こす。
「すまん、来んの遅れた…。」
そういって俺を強く抱きしめた。
だが、俺の頭はまだ快感に支配されている。
特に射精間際で止められたのだからなおさらだ。
俺は自分で竿を握ると、一心不乱にそれを扱きあげた。
「はっ!あああっ!」
俺は自分で自分を慰めながら大きな声でよがる。
そんな俺を東風はじっと見つめていた。
「なんか、されたんやな。
…ポンズ。」
そういう東風の唇が、そっと重ねられた。
あまりのことに、俺は一瞬動きを止める。
そうしている間にも、東風の唇が。
否、舌が俺の首筋を下りていった。
「東風…」
「安心せえ、ちゃんと面倒見たる。」
俺の呟きに東風が答えた。
乳首を舌で愛撫しながら、俺の手から男根を奪い取る。
扱かれながら乳首を吸われ、俺は快感にのけぞった。
「東風、東風ッ!」
どうしていいかわからずに、俺は彼にしがみつきながら必死で名前を叫んだ。
そんな俺をあやすように、俺が名前を呼ぶたびに東風は顔を上げ優しくキスをしてくれる。
俺は妙な安心感を抱いて、そっと東風自身に手を伸ばした。
袴…というのだろうか。
侍がはいている、東方の防具の上からでも、東風の興奮が手に伝わってきた。
「してくれんのか?」
そういって東風は前をくつろげた。
人間にしては大きなモノが、脈打つように反り返っている。
大きく張り出したエラに、絡みつくような血管。
俺は迷うことなく彼を押し倒し、それを口に含んだ。
彼の腰に手を回し、根元まで一気に飲み込む。
強く吸い上げながら、舌で彼を刺激すると彼の体が小さくはねた。
「ああ…。」
東風の声が聞こえる。
視線を上げれば、快感に歪む東風の顔があった。
俺は彼の股間に顔を埋めたまま、剥ぎ取るようにして彼の防具を脱がしていった。
上半身も自ら脱いだのか、彼はあっという間に全裸となる。
たくましい筋肉があらわになった。
俺のどろどろした手で胸をもんでやると、彼の喘ぎ声が大きくなっていく。
その声を聞いていると、俺も我慢の限界が訪れた。
彼を解放し、俺はその場に横たわると自ら脚を広げる。
「東風…ここに、お前のを…」
彼は散らばった装備からサイレントオイルを引っ張り出すと、俺の尻にそれをたらした。
俺の唾液で濡れた竿を自分で押さえつけると、俺の尻に狙いをつける。
そしてそのまま、一気に俺を貫いた。
サイレントオイルが摩擦を減らしたおかげで、痛みはまったくない。
「東風…。」
彼のモノは、モルボルとは全く違った。
熱く、そして優しい。
彼の弾む吐息が耳元に吹きかけられた。
「ポンズ、好きや…。」
俺はそれに答えるように、彼を強く抱きしめた。
東風の腰が激しく振られ、俺にぶつかるたびに大きな音を立てる。
「東風、もっと、もっと激しく!」
本当は、モルボルの甘い息などとうに切れている。
それでも俺は彼の与えてくれる熱に夢中だった。
東風は俺を強く抱きしめながら、激しく俺をえぐる。
その度に強い快感が俺を襲った。
俺と東風の間で、俺の竿が大きく揺れて二人の腹を叩く。
「もうダメだッ、東風…!」
「んっ!」
俺は東風に乱暴に口付けると、下半身を爆発させた。
手を触れることなく絶頂に達したモノは、
強く抱き合う俺たちの間に大量の精液を撒き散らした。
射精と同時に起こった俺の締め付けは、東風にも絶頂をもたらしている。
俺の中でビクビクとはねる東風は、大量の液体を俺の中に残していた。
互いの体に残る精液をふき取り、俺たちは服を身に着けた。
どう、声をかけていいのか。
そう考えていると、服を見につけた東風がこちらに歩み寄ってきた。
「と、東風…。」
いつになく真面目な顔で、東風は俺の間の前までやってくる。
そして、おもむろに口を開いた。
「おいミソノ、ずっと聞いとったんやろ!」
東風は、俺の胸元にそう叫んだ。
そういえば…ずっとリンクパールだけは付けっぱなしだったような…。
『ケアル、いりますぅ?』
おそらくいつもの笑顔を浮かべたままで。
ミソノはさらりと言い放った。
「ええわ。目的のもんも拾たし、先サンド行っといて。」
そういうと、東風は落ちていた刀を拾い上げる。
倒れているモルボルに近寄り、刀でその足を切り落とした。
「東風は…強いんだな。」
「なにがや?」
太い足を苦労して切り落としながら、東風は言った。
先ほどのミソノのことを考えないようにするため、俺は話を続ける。
「モルボルも一撃で倒して…。
俺も東風ほど強ければな。」
そういった俺を東風は静かに振り返った。
いつもと違う…寂しげな顔。
「ワシはな…。
大切なもん守るために、刀持っとるんや。
敵やとか、そんなんを倒すために持っとるわけやない。」
そういって、東風は刀を腰に戻した。
ああ、そうか。
ここに着いた時に彼が口にした心構えという言葉。
そういう、ことだったのか。
俺はようやく彼が言わんとしていたことを悟った。
同時に、自分の未熟さをも。
「なあ、ポンズ。」
東風がこちらに背中を見せたまま、小さく呟いた。
「俺が、守ったる。
せやから…お前も、俺のこと守ってくれ。」
そういった彼の背中は、少し小さく見えた。
辛い過去があったのかもしれない。
心の傷があるのかも知れない。
だがそれは俺にはわからない。
俺は返事の変わりに、彼を後ろから強く、強く抱きしめた。
「…いいだろう。
だが、これで満足せずに精進を続けるんじゃぞ。」
サンドリアに戻り、俺は手に入れたモルボルのつるを依頼主の老人に渡した。
無事に試練を乗り越えたということで、なんとか騎士見習いの称号ももらえた。
そして今。
モグハウス前で二人を待っている。
「おう、待たせたな。」
そう言って東風が後ろから俺の肩を叩いた。
「全く、遅いぞ。」
東風は似合わないローブ姿に小さな杖をぶら下げていた。
「言うとくけど、ワシ魔法とか苦手やからな。
多少遅れても文句言うなよ。」
「ダメですよ、貴方のケアルが生命線なんですからぁ。」
そういうミソノも、着慣れない革鎧を身にまとっていた。
俺のレベルにあわせて二人ともジョブを変えてきてくれたのだ。
「ほれ、なに辛気臭い顔しとんねん。
とっとと行くで!」
そういって東風は腰の杖を振り上げた。
まさか、それで殴る気か?
「それで殴っちゃいけませんよぉ。
攻撃したいならバニシュにしといてくださいねぇ。」
「いや、どっちもダメだろ!」
ミソノが東風にツッコミをいれ、それに俺が改めてツッコミを入れる。
しばらくは、こんな関係が続きそうだ。
「悪くないな…。」
俺の呟きは、誰の耳に届くこともなく―――
「悪くないやろ。」
東風の耳にだけ届いて、消えた。
終