三木瓶太先生の新作。それもFF14という冒険物MMORPGの2次創作。
蒸気戦争異聞から三木瓶太先生を知った身として、これほど期待をするものがあるだろうか。いやない。
内容は、「冒険者」をテーマに、先生が最近特に嗜まれていたコンテンツ「釣り」を切り口にして語られた紀行文だ。
ff14はメジャーパッチ、マイナーパッチ毎にストーリーが動く。
そのストーリーを終えた、プレイヤー的には凪の時期に当たるとき、そこをどう過ごすかは人によって分かれる。
ある人は戦闘ジョブのレベリングを。
またある人はハウジングを。
はたまたある人は超高難易度コンテンツを。
アイテム蒐集を。
写真紀行を。
麻雀を。
そして釣りを。
いくつもあるコンテンツのうち、先生が力を入れて取り組んでいたのが釣りだ。
作中に出てくるエビスという呼び名は、原初世界のヌシを204種釣り上げたとき得られる称号Ebisuのことだ。
伝え聞いた話では、1か月に数回しか来ないレア天候にリアルのプレイ時間帯を合わせ。
目的のヌシを釣るための餌とするために、これまた天候制限のある別のヌシを釣り。
そのうえでヌシとの確率勝負を挑む。
そのような所業も求められるようだ。
これだけでも十分鬼畜だが、ほかにどれほどの苦労があったのかは、コンテンツとしての釣りに触れたことのない著者には想像がつかない。
そしてそれだけ思い入れのある釣りを題材にした小説を、読んだとき理解できるのか不安になった。
全くの杞憂だった。
コンテンツとしての釣りを深く遊んだ人も、遊んでない人も楽しめる小説だった。
舞台は東ラノシア。ここはFF14の序盤に訪れる土地であり、必ず通る場所だ。
メインクエストを通して、帝国、エオルゼア民の情勢が垣間見え、プレイヤーを世界に引き込んでいく場所だ。
そのため多くのプレイヤーが場所、そこに出てくるサブキャラクターを覚えていることも多いだろう。
そこを、今回、ボルシチ・ビーツの請け負ったQUESTをきっかけに、再度たどることとなる。
(中には特定の条件を満たさないと会えない人もいるが、そういった人も含めてほぼ全員登場しているところが恐ろしい)
こんな土地だったな、こんな人々だったな、久しぶりに会えたという感覚を持ちながら、読み進めることができた。
正しく東ラノシアを紐解く、釣りをきっかけとした紀行文だった。
読み進めると言えば。
先生の書くお話は、とにかくテンポが良い。
1つ1つの言葉が脳を駆け巡り、ポンポンと読める。
気づけば1文、1段落、1章、1話と進み、読み終わってしまう。
それは、1つの言葉、1文のリズム、1段落の文量、1章の展開、1話の構成が、しっかりしているからに他ならない。
なお、これは後から振り替えってから思ったことだ。
おそらく最初の観想はもっとシンプルで、みな同じだったと思う。
あぁ、面白かった、と。
これ以上は無粋かと思われるため、ここで筆を止めることとする。
AKIRA